7.製革新技術の吸収─ガラス張り乾燥法
わが国の皮革製造技術は、一部を除き大部分は明治以降欧米諸国からもたらされたものであり、また戦時中のブランクが技術の発展を阻害して昭和25年頃までには見るべき進歩がなかったが、この間欧米諸国の技術はまことに著しい発展を遂げた。
わが国も統制解除後多数の業界人が欧米諸国に視察に行き、輸入機械、輸入副資材の入手が比較的容易になった同26年頃から、新技術の吸収に努力するようになった。その代表的なものをあげると、製革技術のうちガラス張乾燥法と底革速鞣法、革靴製造技術面における靴機械工業の合理化とセメンテッドシステムによる婦人靴の生産技術の導入である。製革法について、その当時の記録によってその概要を述べると次の通りである。
- (1)ガラス張乾燥法
- 甲革鞣製の達成目標は柔軟な味のよいこと、坪増しができることであるが、従来の乾燥方法はきわめて原始的な不完全なものであった。
このガラス張乾燥法によると、温湿度を自動的に調整することができるために、乾燥時間を著しく短縮できるとともに、品質の均一化が行われて、従来の製法による釘打ロスと表面の傷を人工的に除去することができるため、収率において約2割以上の増収となり、大幅なコスト引下げが可能となった。
- (2)底革鞣製法
- 従来厚物鞣製技術上の問題点の一つは、鞣製期間を短縮することであり、この鞣製法はその解決に大きな役割を果たすものである。イギリスをはじめとし欧米諸国ではすでに相当進歩しているが、わが国ではいまだなお研究途上にあって、その経済的効果はまだ充分にはあらわれてはいない。